14.
主人公
(しゅじんこう)
昨年 彪さんは技術者として今まで経験してきた事のない機械を担当することになりました。優秀な先輩が設計し、優秀な工場が協力して作り上げ、そしてお客さんの秀でた技術陣の世話を受けて10年余をかけて育て上げられてきた機械です。一から勉強しなくてはなりませんでした。
「こういう時は白紙に戻ってしまうのが一番良い」と考えてこれまで蓄えてきた知識や経験を棚に上げることとしました。
そして お客様、協力工場、そして先輩から 色々と学びました。
でも 素人です。 まごまごすること度々でした。時には自分を見失いかけたこともあります。
これまでの経験などでは対処できない事なのに 経験や知識がニョキニョキと頭を持ち上げて来ているのです。
白紙になることにしている筈なのにです。
そんな時 この「主人公」という語がよく自分を引き戻してくれました。

中国の彦(げん)和尚は常々「主人公!」と呼んでは 「は~い」と自分で返事をなさっていたそうです。
:「主人公!」「はい!」
:「ちゃんと目覚めて居るか!」「はい!」
:「いつ何時といえども 人に騙されるではないぞ!」「は~い!」
と自から問いかけ 自ら応えて見えたのです。

禅で言う「主人公」は 映画や小説などの中心人物 では無いのです。他人のことではないのです。ここに居る自分自身のことなのです。
しかも 善悪や 好き嫌いや 美醜や・・・そういった差別を すべて乗り越えた普遍的な自分 なのだそうです。
初学の彪さんには 彦和尚の深く高い境涯は 想像だにできません。でも 和尚を真似て「彪さん!」「は~い!」とやることは出来ました。
そして いつの日にか 「主人公!」「は~い!」と言って見たいと思っています。

・・・平成13年2月4日